2009年04月26日

病院の工夫 〜八鹿病院、谷院長



ドクトル・ピノコこと仁科桜子ドクターによる「病院はもうご臨終です」は、医療の現場が医者目線でおもしろおかしく、そして少しの悲哀と訴えとともに描かれている。
日本の医療のしわよせが、こうした医療従事者と患者に行っている。


僕は以前、医者はサービス業だと言ったことがある。
そのとき、友人は「サービス業?」とやや不満げな返し。
その友人は医者だった。

改めて言うが、医者はサービス業だ。
それは、モノではない形で社会に価値を提供している、という意味で。
だから「サービス業のくせに」という意味を込めたことは一度もない。
そんな言い方は、サービス業に失礼だ。
医者が特別に倫理観を持たなければならない、という考えも疑問。
医者に限らず、皆が倫理観を持って仕事をすべきだから。

このブログで何度も言っているように、医療問題の本質は、医療の需給がアンバランスになっていること。
病院の受け入れ拒否だって、問題は、「受け入れない」ことではなくて、「受け入れることができない」ほどしか、医療の供給がないこと。

解決には、供給を増やす、需要を押える、価格調整機能を部分的に働かす、しかない。
そして、それぞれに、マクロの制度を変えるとともにミクロの工夫が必要。

ミクロの工夫の一つとして、医療の供給を増やす方法は、病院の生産性を上げる、ということがある。
そして、ここに一つの例がある。

八鹿病院、谷院長。
彼はまさに、「病院はサービス業である」と言って憚らない。
八鹿病院は22年連続黒字の公立病院。ちなみに全国の公立病院は8割が赤字。1万人強の市で、年間14万人の「来客数」。つまり、市外からも多くの患者を集める「人気病院」なのだ。

黒字だからいい、というつもりはないが、皆さんのお近くの病院で、ロビーにグランドピアノを置いて・・といった姿勢が見られるところはありますか?

ピアノを置けば客を呼べる、という意味ではないが、「患者の満足度を上げる」工夫と「医療従事者の満足度を上げる」工夫を徹底的に考えている。
例えば、通常5000円強かかるがん検診を、1100円で、車で移動検診する。
これは、広告効果とともに入院者・重病患者を増やさない、という一石二鳥効果を持ち、結局ペイする。
患者の自宅復帰率をみると、全国平均6-7割がせいぜいだが、八鹿は8割を超える結果となっている。さらに、退院後についても、自宅療養を容易にするためにリフォームまで提案する。

医師不足の一つの原因として、医局制度から研修医制度への変更が指摘されている。すなわち、以前は大学の医局制度で人事を指示できていたが、研修医の選択制になったことで、僻地への人事ができないってわけだ。

もちろん、それは解決すべき問題だが、それを訴えても日々は変わらない。
病院内での生産性を上げる方法も考えなければならない。
ベッド10床当たりの医師数。全国平均は1.5人、八鹿は1.1人で回している。
医師の生産性を上げる工夫として、まずは総合診療科の医師が診る。その後必要とあれば、専門医に回す。
いわゆる「かかりつけ医」を、病院内に設けることで、一人当たりの医師が診られる患者の数を増やしているわけだ。
また、看護師が10床当たり、全国平均3-4人のところ、八鹿は7.6人。
つまり、看護師が大きな役割を担っているわけだ。
病院外でも訪問看護をすることで、なるべく入院患者を減らす努力をしている。

マクロの制度を変えなければならないのは当然として、ではそのせいにしていたって前にはなかなか進まない。
こうした、ミクロの現場での工夫を病院はもっと取り入れてもいいのでは?
そして、病院経営のガバナンスを利かすシステムも欲しいところ。
ダメな経営者が医療従事者を無用に苦しめないように。

ぜひ、ドクトル・ピノコの次回作には、「では、どうすればもっと病院の生産性は上がるか」といった視点を期待したい。それが、ご自身たちの負担を下げることにもなるのだから。

posted by nao at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月09日

まずは現状を知れっての 〜兪炳匡「『改革』のための医療経済学」

箕輪はるかさん、肺結核大変ですね。僕は綾瀬はるかさんのほうが好きです。

ハリセンボンが入院したからというわけではないですが、今日は医療問題の本。

医療改革は待ったなしです。
課題はマクロの制度にもミクロの運営面にもあると思います。
要は、医療の供給が足りないってことなんですが。
ミクロの運営については、ひとまずこうやれってのを殴り書きしました。(こちら

で、マクロのほう。
あまりにも印象論で論議が進んでいる気がします。
実態を捉えない改革は、えてして改悪になりがちです。

ミクロの事象を普遍化するのも危険です。
ミクロの発想でマクロを解決しようとすると、副次的効果を考えず、部分では改良して見えて、全体では改悪していることが、まま起こります。
マクロの問題は、マクロのデータに基づいて、副次的な影響を考慮して政策を考えなければなりません。(部分均衡でなく一般均衡的な発想)


こうした問題を避けるために、医療制度改革を語るなら、せめてこの本は必読ではないかと考えます。
通説がいくつか覆されます。

以下、メモ書き。

●日本の医療費は低い
●医療費高騰の主因は高齢化ではない。医療技術の進歩。
●皆保険が必要な理由は、民間医療保険は情報の非対称性の問題から逆選択が起こる。
●病院の株式会社化は必ずしも解決策でない(地域独占?経済効率)
●一次予防は費用対効果が高いが、2次予防医療や3次医療よりも経済効果が低い可能性もある
●コスト抑制をするなら、需要側に経済的なインセンティブを与えるより、供給側に規制を設ける方が効率的(保険組織から医療機関に支払う総額に上限を設ける。家庭医を受診しなければ専門医を受信できない、という医師の機能区分など)
●早急な抜本的改革は危険。まずデータを公開し、広く評価させること


posted by nao at 22:09| Comment(1) | TrackBack(1) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月21日

病院改革、こうすれば?

医療改革はマクロの制度改革とミクロの病院改革の両方が必要。
病院改革は、うだうだ言ってないで、引退したトヨタの元工場長とか元生産管理責任者にしばらく張り付いてもらったらいい。
オペレーションの効率化をしてもらえば、お医者さん看護師さんを始め、生産性アップでみんな楽になるよ。

金がどうしてもない病院は、地元の人から小口で出資を募ればいい。地元の人も病院とか診療科がなくなるぐらいなら、一口5万とかで出資者になったほうがマシなはず。そして、皆で経営のガバナンスを利かせればいい。
posted by nao at 11:02| Comment(0) | TrackBack(2) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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