2009年07月02日

日経ビジネスオンラインで連載が始まります。

コモンズ投信バリュークリエイト佐藤明さんのタッグで、日経ビジネスオンラインで連載を始めることになりました。

タイトルは、「インサイターになろう 〜会社がわかる、社会がわかる〜」です。
インサイターとは、insight、つまり洞察を得る人、洞察を与えられる人、という意味です。

第1回目は、コモンズ社長の伊井さんです。
記事はこちらからどうぞ。

最初の1ページ目だけオープンなのですが、無料で会員登録できますので、ぜひ全文読んでみてください。

僕も何回目かに登場しますので、乞うご期待!
ラベル:コモンズ投信

2009年06月29日

「ビジョナリー・カンパニー」は、間違い?

この時礼賛してはみたものの、ふと最近思ったのだが、「ビジョナリー・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー2」は、結論の部分だけ、論理学的に根本的な間違いを犯していないか?

AならばB、から導かれるのは、BならばA、ではなく、BでなければAでない、のはずだが。
ラベル:書評 金融

コモンズ30塾にHOYAさんがいらっしゃいます。

明日は、コモンズ30塾です。
まずは、運用責任者の吉野が、マルキールさんに反論します。

それから投資先のHOYAさんを招いて、参加者の皆さんとQ&Aセッションをします。

まだ若干席に余裕があるので、もし明日の夜お時間ある方はぜひ!

お申込みはこちらからどうぞ。

便利さと付加価値

よく聞く疑問。
「現在は、昔よりも色々なことが便利になった。
洗濯機があるから選択に時間がかからなくなった。
水道があるから水汲みに行かなくて済むようになった。
…なのに、なんで人間は今もゆったり生きられないのだろう?」

答えは簡単で、便利さと付加価値は違うから。
便利さを生むものが付加価値を生むとは限らないから。

人は生きるために、食わなきゃならない。
食いぶちが必要だ。
食いぶちの源は付加価値だ。
便利なものが出てくる。最初は他に誰もやっていないから、その便利なものは付加価値を生む。
そのうち、儲かるから他にやり始める人が出てくる。競争が激しくなる。
便利なものが生む付加価値はどんどん減っていく。
付加価値を生み続けるには、便利さだけでは足りないのだ。

だから、便利になってもゆったりはできない。
これはどこまで行ってもそう。
社会システムが資本主義な限り。
自身でゆったりするという選択をしない限り。

当たり前と思われるかもしれないが、これが当たり前じゃない。
当たり前じゃないから、バブルの発生。
新技術が生まれるたびに、期待が行きすぎてバブルが発生する。
便利さを生み出すものが、付加価値を生み出し続けられるとは限らない。

2009年06月25日

電気自動車で皆が気づいていないこと

京都セミナー、まだまだ募集しておりますので、関西圏のかた、ぜひお出かけくださいませ。お会いするのを楽しみにしています。

ぐっちーさんのところで電気自動車ネタがあったのですが、触れられていなかった点があります。

最近はEV(Electric Viecle)って言い方が浸透しつつありますが、anyway、電気自動車のこれまでの課題は、充電時間と走行距離、だったわけです。

しかし、電池ごと取り換える仕組み、がこれを解決する可能性があります。
充電ステーションではなく、電池ステーション。
多数の電池を、電力の余っている夜間に充電して地下駐車場みたいなイメージでストックしておく。
車が来たら、時間かけて充電するのではなく、電池ごと取り換える。
車はそのままサヨウナラ、残された空電池は、電池ステーションで充電される。
これ、実際、イスラエルとデンマークで、すでに実験的に開始されています。

燃料電池車のアイデアもありますが、エネルギー損失から言って、電気自動車のほうが今のところ可能性が高いようです。
しかも、ステーションの建設コストが、充電ステーションと水素ステーションでケタ違い。
電池ステーションの建設&維持コストはどんなもんなんだろう?
走行距離あたりの燃料コスト(つまり電気代)も、ガソリンの数分の一。

しばらくはハイブリッド、そのうち、電気が家庭用、遠出はレンタル、みたいな使い方がをする人が多くなるんですかね?
車を保有するのではなく、カーシェアリングも進むかもしれませんし、そうするとますます走行距離の問題は小さくなる?

電気自動車って作り方簡単なので、このとき書いた方向にますます進みつつあるようで。

ここらあたり、清水典之「『脱・石油社会』日本は逆襲する」に出てきますので、ご参照に。やたら詳細だったりするのですが、そこはさすがにライターさん、読みづらいということはまるでなく、今のエネルギーの流れがよく分かります。
ただ、原子力発電所の排水温度によるCO2排出については、触れられていないですね。
(原発は二酸化炭素排出しないのでエコだ!という主張は、この海水温上昇によるCO2排出をカウントしていません。)

ちなみに、著者の清水典之さんは、僕がSAPIOのインタビュー取材に出た時に、インタビューしてくださったライターさんです。
その節はお世話になりました。


2009年04月07日

チャプター11は減量道場

かつてサウスウエスト航空のCEOだったハーブ・ケレハーは言いました。
「破産審査裁判所は、航空会社にとっての減量道場と化している」

そして、業界そのものが儲からない時代になりました。

ゾンビのように復活してくる。
ミラジョボビッチはたいへんです。

果たして、自動車業界は・・?
ラベル:経済 金融

2009年03月26日

バフェットの光と影 ジェフ・マシューズ「バフェットの株主総会」

投資の世界に身を置く人で、ウォーレン・バフェットの名前を知らない人はいない。
突然ですが、一つクイズ。
バフェットがバークシャー・ハサウェイの経営権を握った日に、バークシャーの株式を購入した人は、最高値で何倍になったでしょう?

ヒント:同じ日にNYダウに投資したら、最高値で14倍

・・・
答え:最高値で8400倍

全然ヒントになってねーよって?
そう、全然ヒントにならないぐらいのパフォーマンス。
保険事業を営んでおり、その滞留資金(保険料の収入と保険金の支払いの時間差)を使うという有利さはあるものの、その実績はもはや伝説。

そして、その実績とともに伝説となっているのが、バークシャーの株主総会。
最初は、買収先の保険会社の社員食堂が会場だった。出席者は十数人。

ここでもう1問クイズ。
現在の株主総会への出席者は何名でしょう?

・・・
答え:3万人

バフェットとマンガーの率直なQ&Aがその実績とともに評判を呼び、さらにバフェットの手によるバークシャー年次報告書「会長からの手紙」で紹介されるや、参加者が膨れ上がった。
今では毎年オマハという片田舎にもかかわらず、スタジアム(!)に3万人ほど集める大イベントになってしまった。

本著は、この株主総会に07年08年と2年連続参加した体験記。
ある種、「カルト」な株主総会を追体験できる。
(僕のお知り合いにも、2人巡礼者がいます。)
しかし、著者の目はあくまで冷静。
バフェット礼賛者には見えない矛盾を指摘している。

そのいくつかの矛盾は本著をご覧いただくとして、最も気になるのは、買収先の会社の現預金が、買収した途端バフェットの投資資金になり、本業の再投資には少額しか回らなくなること。

例えば、シーズキャンディーズというチョコレート会社。
一部引用すると、
「バークシャーによる1972年の買収以来、累計で135億ドルの利益を生み出す一方、建物の拡張や設備の増強には3200万ドルしか使っていない」

「利益」が営業利益なのか最終利益なのか不明だし、3200万ドルが固定資産への支出のことなのか、厳密なところはわからないが、本業への再投資よりもバークシャーの投資資金に圧倒的にお金が使われる、ということは間違いなさそうだ。
シーズキャンディーズは、今も米国内、しかも西部に店舗展開が留まっており、グローバルな企業にはなっていない。
ネブラスカ・ファーニチャーという家具会社も同様だ。
本著にも出てくるが、在庫管理のシステムは今だに92年に開発したものを使っている。

バフェットが「経営には口を出さない」ということは、よく知られた事実だが、それは正確ではなくて、「事業運営には口を出さない。代わりに、資本配分は完全にコントロールする」というのが正しい言い方かもしれない。
配当を出せ!というのではなく、配当も含め、すでにある資金ストックもコントロール。

だがら、設備投資のかかる企業は避けたいし、できれば全株保有したいのだ。

買収企業そのものの成長よりも、新たな成長企業を買うほうを優先させるビジネスモデル。
それの何が悪いと言われれば何も悪くないのだが、100%の正解でもない気がするのは僕だけだろうか。


2009年03月07日

ブログって出所元にはならんの?

日本を代表する某金融機関のセミナーに参加したのですが、僕が2年前にブログで書いたことと同じことを、セミナーで発表していてびっくりしました。これで飯を食うそうです。

「モンテカルロDCF、リアル・オプション」
特にコメント欄に詳しく書いたこと、ほぼそのまんまでした。

いや別に他意はないです。

ただ、もしも、もしもそうだとしたら、

せめてアイデアの出所は言及してほしいなぁ。
自分のアイデアで世の中良くなるんだったら、全然使ってもらっていいんだけど。

お行儀のいい人は、ブログでもきちんと引用しているよね。
まあ引用できるほどの格調高いブログでもないですが。

ラベル:金融

2008年12月11日

日銀の人への提案

日銀の人は、一度、実際の中小企業融資の現場に出てみたほうがいいよ。
日銀が利下げしても、銀行は貸出増やしたり融資条件緩和したりするつもりはないよ。

ベースが下がってもリスクプレミアムを上げるだけだから。

日銀は、研修プログラムで、中小企業の資金調達をやってみるってのはいかがだろう?

2008年12月03日

Bloomberg記事

Bloombergニュースに、割と僕たちが伝えたいことを汲んでくれた記事が紹介されました。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aA9AFflZ6784&refer=jp_japan

2008年11月19日

「小が大をのみ込む」ねぇ…

一応全文引用。
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円高で三菱レイヨンが大勝負 小が大をのみ込む買収を決断
メタクリル酸メチル(MMA)モノマーは、液晶パネルや自動車用ランプなどに使われるアクリル樹脂の原料で、有望と目されている。

その生産能力で業界4位の三菱レイヨンが、業界トップの英ルーサイト・インターナショナルを16億ドル(約1600億円)で買収することになった。ルーサイトの筆頭株主である英投資ファンド、チャーターハウスが売却先を探していたところに、三菱レイヨンが円高の追い風を受けて食らいついた格好だ。

 買収資金は大半を借り入れで賄うことになるが、首脳陣は喜びを隠せない。「当社のMMA生産シェアは35%となった。原料から樹脂まで一貫生産するMMAチェーン戦略に弾みがつく」(鎌原正直社長)。2015年近傍の目標、売上高1兆円(現在は4185億円)に向けた布石と位置づける。

 じつはルーサイトは23%というトップシェアに加え、独自製法の強みを持ち、引く手あまたの存在だった。

 通常、MMAモノマーはアセトンの副産物を使ったアセトンシアンヒドリン法で作られる。それに対して、三菱レイヨンはプロピレンの副産物を使った直酸法でコストダウンを図ってきた。

 これよりはるかにコスト競争力があるといわれるのがルーサイトのアルファ製法だ。プロピレンより安いエチレンの副産物を使っているためで、シンガポールに大型工場を立ち上げ中だ。

 三菱レイヨンは、05年にルーサイトと原料の相互供給関係を結び、先手は打ってきた。それでもルーサイトの製法は、エチレンを低コストで生産する中東勢にとっては垂涎の的だった。中東に大型工場を建設中の住友化学もまた興味を持っていたといわれる。

 気炎を上げる三菱レイヨンだが、「ルーサイトを他社に取られずにほっとしている」(鎌原社長)というのが正直なところだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子 )
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なるほど、しかし「小が大をのみ込む」ねぇ…
こういう表現はあまり意味がない、というか誤解を招きますね。
買収ってのは、被買収会社の株主が買収会社の株主に代わるってことであって、大とか小とか強とか弱とか、あんまり関係ないんですがね。

ご参考。
http://no-regret-life.seesaa.net/article/94765841.html

ちなみに、あくまで発表資料(http://www.mrc.co.jp/press/pdf/press081111.pdf)からざっくり計算すると、この買収でのROIC(投下資本利益率)は約4-5%ぐらいでしょうか。
買収資金の調達は全額借入で、例によって条件が書かれていませんが、三菱レイヨンの財務はそう悪くないので、まあ利率が4-5%を超えることはなさそうです。
ということは、この買収に関わるWACCはそれより下。
ルーサイト社がえらく厳しくならなければ、まあ悪くない買い物と言えるのでしょうか。
あとは、ルーサイトをどれだけ伸ばせるか、シナジーをどれだけ出せるか。

2008年10月21日

サブプライムとCDSがなぜ関わるか

似たような質問をいただきましたので、整理しておきます。
サブ・プライムの話が、なぜCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)問題と関わるのか、ということです。

まずCDS(credit default swap)の説明から。
CDSクレジット・デフォルト・スワップの仕組み自体は、簡単なものです。

A銀行が、ある企業に貸付けをします。
A銀行は、貸し倒れリスクを分散するために、デフォルトした時の損失補てん契約をB銀
行と結びます。
A銀行は、いざというときに損失補てんしてもらう代わりに、B銀行に定期的にプレミアム=保証料(金利みたいなもの)を払います。

これがCDSです。
A銀行がB銀行からCDSを買った、ということ。
これそのものは、サブプライム・ローン問題とはなんら関係のない話だったのです。

CDSの価格とプレミアムの付け方は、対象企業の倒産確率が基本なのですが、本当はA銀行の信用リスクやB銀行の信用リスクも絡んできます(ここがミソ)。

それから、上の例ではA銀行がB銀行からCDSを買っていますが、B銀行がA銀行から買うケースもあるわけです。これが相対。そうすると、BS上は相殺される。
しかし、問題が発生すると突如…。
だから、メディアが騒いでいるように、CDSのマクロの残高合計をとってああだこうだというのは正しくない。
本当は、みんなでCDS契約の相対を解消すればよかったりするのですが、問題は、解消しようにも今やまともに評価ができず、大暴落。ここにサブ・プライム・ローン問題が関わってくるわけですが・・。


サブ・プライム・ローンは、CDO(Collateralized Debt Obligation債務担保証券)の一種です。略語で書くとCDSと似ていますが、全く内容の異なるもの。
こちらは、住宅ローンを住宅を買いたい多数の人に売って、そのローン支払いのキャッシュフローを原資にした証券化商品を組成して、投資家・金融機関に売ったもの。
この元の住宅ローンが焦げ付いたので、最終的に買った世界中の投資家・金融機関に波及してクレジット問題になった。
ごちゃ混ぜにして組成したので、こちらもまともな価格評価ができない。金融機関の信用問題になる。そうすると金融機関発行のCDSに波及してきているのですね。

さらに、CDOの原資としてCDSのキャッシュフローを使っていた商品(これがsynthetic CDO)があったりしますんで、やっかいです。

こうして、もともと別物だったCDOとCDSが絡んで、世界的な信用収縮になっているの
が現在、という感じでしょうか。

2008年08月24日

保険金がらみの事件が古今東西時代を問わず多発する理由

なるほど、フラクタル的にいえば、べき乗則のα指数(変動と頻度を軸にした対数グラフの傾き)が、所得分布の場合、2に近いのに対し、保険金支払いの場合、1/2程度になるからなのか。
(簡単に言えば、大金持ちになれる確率より、多額の保険金が支払われる確率のほうが、はるかに高いから。)

2008年07月23日

砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳「日本企業のコーポレートファイナンス」

豊富な日本企業の事例を取り上げて、ファイナンスの主要テーマを取り上げており有用。
事例の一端を挙げれば、大阪ガスや松下電器の資本コスト経営、アサヒビールの和光堂買収、王子北越の買収劇、ANA&JALの公募増資比較、資生堂やマブチモーターの株主還元政策など。

個人的には、企業の現金保有について、キャッシュの効率利用か、リスク対策としてのバッファー機能か、というテーマには関心があり、優良企業がキャッシュポジションが比較的多いという指摘は、「なるほど」という感じ。
いや、基本的には、価値を生まない現金をそのまま滞留させておくのは非効率極りない(その意味で、飲食店にとっての「保証金」は非常に重い)。とはいえ、経済は上下するので、ある程度の余裕資金は必要。

その点、注書きに少し触れられていた程度だが、おもしろい指摘があった。運転資本を現金を含めない「流動資産―流動負債」と捉えた場合、アメリカ13%、ドイツ20%に対して、日本は0%。運転資本に現金を含めた場合は、アメリカ、ドイツとほぼ等しくなる、というのは意外。
日本企業は掛商売ではなくキャッシュ商売が多いってことで、現金保有は運転資本として必要であり、そう非効率でもないということだ。

一方で、株主への総還元性向(自社株買いと配当)を日米で比べると、米国が70%程度(うち配当性向30%)、日本が30%程度(うち配当性向が20%)。日本企業が相対的にまだ成長企業が多いのなら整合的だが(還元せずに次の事業投資に回すべきなので)、しかし、実態はそうではないので、日本の株主還元は今後も進んでいくんだろう。特に、自社株買いは、まだ使いこなしていない感じがするので、今後もっと増えていくはず。

2008年07月03日

本末転倒 〜業績予想達成と企業価値

証券アナリストジャーナル08年5月号の「企業価値の破壊と財務報告に関する意思決定」及び「日本企業の財務報告―サーベイ調査による分析」によると、日米ともに、企業の目標利益達成のために、企業価値を犠牲にしても、裁量的に利益を調整する傾向があるらしい。
調査ベースが違うので比較はできないが、あるアンケート調査では、日本では4割、米国では2割強しか、業績目標達成のために企業価値を犠牲にしない、と答えなかった。

株式市場との対話を重視しないのはもったいないが、一方で、短期の会社予想達成のために企業価値を犠牲にするのは、本末転倒もいいとこ。

でも、逆にいえば、そうしない企業ってのは、ふむふむ‥

2008年05月19日

コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット・ディスカウントってよく言われるが(しかもネガティブに)、何か変じゃない?
だってコングロマリットだという「だけ」でディスカウントされているなら、そりゃ割安ってことじゃん。じゃあ買えばいいじゃん。

しかも、もしも事業ポートフォリオが互いに相関低く組まれていたりしたら、そりゃ本来リスクを下げることになるわけで、余計割安ってことになるよ?

2008年05月13日

牧野洋 「バフェット −『米国株式会社』を動かす男」

バフェットの人となり、投資履歴を知ることができる本。

僕がこれを読んで思ったのは、バフェット方式の投資は、これはこれでそれなりのリスクを取っているんだなぁ、ということ。
よほど自分の目に自信がないと、ここまで確信を持って集中投資はできない。
バフェット型の投資は、割安かつ安全重視の投資、との評価もあって、確かにそうなんですが、一方で、ここまでの集中投資は、バフェットではない凡人が「うぬぼれ」で間違うリスクが相応に高い、と思いました。

それから、皆がバフェット型の銘柄選択をしたら、世の中それほど進歩しないかも、とも思いました。
なぜなら、将来が見えづらい分野には投資しないから。
皆がバフェットであったなら、成長分野へのリスクマネー供給はなかなかなされないでしょうね。

これ、バフェットの否定ではないです、バフェットへの盲目的礼賛の否定であって。
バフェットのインタビュー番組を見たことがありますが(ビル・ゲイツと一緒に出た番組)、お茶目で控え目でウィットに富んで、それでいて深い洞察力を持ち、非常に魅力的な人だと思いました。他人を楽しませることが大好きなようです。
それに、僕自身、投資するならバフェット型に近いスタイルでやりたいと思いますし。

國定克則「『財務3表のつながり』で見えてくる会計の勘所」

会計でいい本はないか、と聞かれることがあるんですが、これまでなかなかお薦めできる本がありませんでした。が、ついに。
僕も紹介してもらったのですが(Oさん、ありがとう!)、この本はいいです。

財務項目の説明は「売掛・買掛」と「減価償却」以外出てきません。
その点では、他の本で補充する必要があります。

その代り、
企業の運営が会計にどう表れるかを、「動的に」見せてくれます。
PL、BS、CFがどうつながっているかを、「動的」に見せてくれます。
これ、やる気があれば、エクセルなどで順を追っていけば、理解度10倍でしょうね。

会計が性的にしか、もとい、静的にしか見えない人は、必見の本です。
(会計が性的に見えたら病気だ)

2008年05月11日

現金買収と株式交換買収、もうひとつの違い

これの続き。
現金買収と株式交換での買収とでは、もうひとつ大きな違いがあります。

それは、情報の非対称性の問題。

現金買収では、買収する側のみが、買収される側の価値を知る必要があります。
一般的には、買収される側のほうが自身の情報を持っていますので、情報の非対称性が生じます。
買収される側が受け取るのは、現金ですので、買収する側のことは別に知らなくていいのです。

株式交換の場合、お互いに相手の価値を知る必要があります。
買収する側は、当然買収対象のことを知る必要がありますが、買収される側も、対価に相手企業の株式をもらうわけですから、どれだけの価値があるか、知る必要があるわけです。
お互い、情報の非対称性の問題を抱えるということですね。

情報の非対称性がある場合に、何が起こるかというと、逆選択、ですね。
悪貨が良貨を駆逐する、というやつです。

これを避けるには、「(利害関係にない)第三者による評価」があります。
ちなみに、一般的な非対称情報の解決方法には、そのほかに、規制(だましたときに罰則を与える)、ブランド(この会社ならだまされない)、などがあります。

というわけで、現金買収よりも株式交換が増えると、企業価値評価ができる人は仕事が増えるわけですね(笑)

関連記事:
買収は弱いものが飲み込まれる?冗談おっしゃい! 〜現金買収と株式交換の違い
三角合併解禁

2008年04月26日

買収は弱いものが飲み込まれる?冗談おっしゃい! 〜現金買収と株式交換の違い

以前の自分の記事を読んでいて、もしかして誤解を受けるかなと思ったので、補足します。
一応、記事再掲。

---------------------------
三角合併解禁
本日より三角合併が解禁になりましたね。
正直、それが何?というのが印象でして。
だって、現金で買おうが、親会社の株式で買おうが、本質的にはなんら変わらないので。


買収の対価として被買収会社の株主に支払われるもので、一番イメージしやすいのは、当然現金なわけですが、三角合併は、対価として、買収側の会社の株ですらなく、その親会社の株が使えるということです。

新会社法の施行自体は、平成18年5月1日、つまり去年の今日だったわけですが、この買収対価の柔軟化部分については、日本の産業界の「防衛策準備する時間をくれよー」ってことで、1年先延ばしになったわけですね。

これでますます日本企業が買収の標的なる!防衛策の研究!だとかって、専門家に大金払って勉強会、なんてことがテレビなんかで流れ、大概は、日本の企業が時価総額が小さい!だから買収される!ってな脅しが決まり文句になっているわけですが、なんのこっちゃです。
「時価総額が小さい」ことは特に問題なわけではありません。
「時価総額が『割安』」なことが問題なわけです。

あっちの企業の時価総額は何兆円、こちらの企業の時価総額は何百億円、だから飲み込まれる!なんてことが、まことしやかに語られるわけですが、そうじゃないです。
こういうこと言う人たちは、経済の本質が「何かを得る代わりに何かを差し出す」ってことだということを、根本的に分かっていません。

普通の買い物を考えてください。
買い物するときは、自分にとってその物の価値(得るもの)が、付いている値札(差し出すもの)以上だと判断するからこそ、買うのですよね?
金持ちだからといって、自分が価値を見出せないものに大金出しますか?
傍から見て「なんでこんなものに大金払う?」って大金持ちはよくいますが、その人たちだって、自分の得られる価値(見栄とか、そういうものも含めて)が、実際に払った価格より大きいからこそ、その買い物をしたのです。

買収も同じです。いくらあっちの企業が時価総額でかいからといって、こっちの企業を「安い買い物だ」と判断しない限り、買収なんかしませんよ。
いくら「価格」が安いからといって、「価値」より随分と高い買い物しちゃった日には、既存株主に訴えられちゃいますからね。
つまり、単に価格が安いから買うのではなくて、「価値に対して安い価格しか付いていない」からこそ買おうと思うわけです。
その際、現金を差し出すのか、株式を差し出すのかで、本質的な違いはありません。
「何かを得る代わりに何かを差し出す」、その「何か」が、現金ではなく親会社株式が使われるってだけです。

要するに、時価総額の「大小」が問題なのではなく、「割安」かどうかが問題な訳です。
自社の株式が割安に放置されるような経営をするな、という至極まっとうな結論しかないわけです。



とは言っても、経営者にとって規模をでかくするインセンティブ(割高でも買い物するインセンティブがあるのも実は事実なわけで、その話はまた今度。
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記事で書いたとおり、「買う」という行為については、現金買収も株式交換も変わりはないです。買った場合の価値が(シナジー効果も含めて)、買収価格を上回るなら、買い、そうでなければ買わない、この本質については現金だろうが株式交換だろうが同じことです。

但し、買収資金の調達、そして、買収後の株主の立場、という点では、現金買収と株式交換による買収は、異なります。


●買収資金の調達
これについては、現金の場合でも、内部のキャッシュを使うのか、外部から新たに調達するのか、その場合、負債にするのか株式にするのか、によって、BSの構造が変わります。
そのため、企業価値へのインパクトも異なります。

株式交換の場合も、既存の株式を使うのか、新たに発行した株式を使うのか、によって、これまた企業価値は変わってきます。


●買収後の株主の立場
現金買収の場合、被買収会社の株主は被買収会社の株式(実体的にはその事業)を売り、現金を受け取って、ハイ、さようなら。買収した側の会社に関わることはありません。
もちろん、その後、市場で買収会社の株を購入しない限りですが。
そして、ここが最大のポイントですが、現金買収の場合、現金を渡された被買収会社の株主は、現金収入に対して税金がかかります。
市場で買収会社の株を購入しようにも、税金分は価値の流出が起こってしまいます。

株式交換とは、被買収会社の株式(事業)を売り、買収会社の株式(事業)を手に入れることです。つまり、新たに買収会社の株主になるわけです。文字通り、シェアホルダーになるわけで、買収会社の成長ストーリー(あるいは破滅への道)に乗ることになります。

ここで問題になるのが、交換比率。これによって、被買収会社の株主は、被買収会社の株式を安く買いたたかれるのか、あるいは、「新しい買収会社の株式を安く手に入れることができるのか」、決まります。
というわけで、ここで表題の問題になるのです。
メディアの論調や一般的な認識は、被買収会社=弱者、買収会社=強者、であるが、とんでもない勘違い。
この構図は、交換比率でいとも簡単に逆転してしまいます。

もし、買収する側の株式が割安に評価されていて、その価格をもとに事業を買い取らなければならない場合、より多くの株数を被買収会社の株主に渡さなければなりません。
こうなると、買収する側の株主が損をして、買収される側の株主が得をします。
被買収会社の株主の持ち分が思いのほか大きい、というのは十分にあり得るわけです。

だから必死こいて、交換比率を交渉するのです(なのに、日本ではこの交換比率も決めずに、買収だけが決まったりするのは、牧野洋「不思議の国のM&A」で書かれているとおり)。

だいたい、普通の買物だって、売る側が常に弱くて、買う側が常に強い、ってことはないでしょう。
たいしたものじゃない代物を高く売りつければ売る側の勝ちだし、掘り出し物を安く手に入れれば買った側の勝ちです。
なのに、事業の売り買いになると、とたんに買う側が常に強く描かれるから、おかしな話ですね。

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