2008年04月01日

不動産の粘着性

米国の雇用統計やISM指数など、米国不動産市況下落の実体経済への影響が明らかになりつつあります。
だから言ったでしょう、そんなもんじゃないって。
米国の住宅市場、サブプライム・ローンにばかり注目が集まっていますが…
誰だろうねー、影響軽微だの、もう一巡して反騰期待だの言ってたのは。

FRBは必死で金融面での信用不安には手を打っていますが、実体経済への影響はどれだけ食い止められるんでしょうか?
もうすでに実質的には公的資金注入ですよね。(ベアスターンズ買収の件もそうだし、SWFなんてまあ半分海外の公的資金に近い性格ですよね?もちろん米国のカネではないし、建前上は運用ですが)

もちろん、信用不安を食い止めるのは大前提、しかし、信用不安が解消されたからと言って、実体経済へ影響を食い止めきれるものではない。なぜなら、不動産の逆資産効果が、カネの融通とは別ルートで実体経済に影響を及ぼしますので。

不動産のタチが悪いのは、その粘着性。
つまり、「今日下がった価格は明日も下がる可能性が高い」ということです。
株価のようなブラウン運動で近似できるものは(本当はできないけど)、いわゆるランダム・ウォークと言って、「今日下がったからと言って明日下がるとは限らない」という性格が強いのですが、不動産はそうはいかない。
要するに、上げ出すと長期だが、その分下げだすと長期になる、という性質があるのです。

しかも、米国不動産の問題は「サブ」プライムローンだけじゃない。
ホームエクイティー・ローンで消費に回っていた分は、不動産価格の上昇がなくなっただけで剥落します。
これについては、こちらに書いたのでご参照。
サブプライムローン問題なんて名前をつけるから、問題を矮小化してしまうのです。
米国不動産バブル崩壊と言いなさい。

問題の本質は二つあります。
CDOなどで不動産ローンを証券化して、リスクを分散したつもりが、実は相関度の高いものを束ねたので、実はリスク分散していなかった、それを世界に売りまくっちゃので、世界に飛び火した、というのが問題の第一点。しかも、それを評価できないものだから問題が肥大化してしまった。
もう一つは、不動産価格上昇を止める術がなく、さらに価格上昇を前提とした仕組みに消費が頼りすぎた、ということ。

信用供与や公的資金は、第一点の解決策にはなるが、第二点目の解決にはなりません。

じゃあ、第二点目の解決策は何かというと…。まあ基本は問題そのものに手を突っ込むことですが、ねえ…。
要するに、そう打つ手が無いわけで、しばらく続くんじゃないですか?
そう打つ手が無いのだから、実体経済浮上策としては、ドル安は放置にならざるを得ないでしょうね。(ドル高政策は今は昔)

で、ここで問題になるのが、ドル安による輸出増というシナリオは、うまくいくのか?という点。
いわゆる、「デカップリング」か「世界は一つ」か。
デカップリングなら、米国以外の経済が牽引役になって、ドル安→米国の輸出増、というシナリオが機能する。
「世界は一つ」ならば、米国の影響は大きく、世界経済の不調は長期化する。

水野和夫氏「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」によると、
○米国のGDP成長率と他国のそれの相関は高まっている
○米国輸出の世界輸出に占める割合(浸透度)は下がっている(米国は輸出経済じゃない)
○BRICSの輸出浸透度は上がっている(BRICSは輸出経済)
というわけで、もしこれが正しなら皆さんが思っているほど、デカップリングには期待できない、ということになるんでしょうか。
とは言え、日本株が示しているほど、日本企業は米国経済に依存しているんでしょうかね?あ、政治リスクですか、そうですか。

関連記事

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・日銀の、いや中央銀行といふものによる金融政策といふもののミッションは何か、をまず議論するべき
・サブプライム・ローン問題の本質は「不動産バブルの放置」と「証券化商品のリスク・リターンの不認識」にある




posted by nao at 14:16| Comment(0) | TrackBack(2) | 経済(学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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