2007年11月02日

「群集の」「叡智の」値段

群集の叡智にどう値段をつけるか、これはオープンソースでの価値創造における付加価値の配分問題とも大いに関係してくる話で、個人的に実に興味のあるところです。
(群集の叡智については、以前、「組織の知恵」を書きましたのでそちらを参照のこと)

これについて、小飼弾さんがおもろいエントリー(全文はこちら:叡智の値段)を書いてらっしゃいますので、反論と気づきをまとめておきます。


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叡智は0円であるだけではなく、0円でなければならない
叡智の値段が0円であるもう一つの証拠があります。値がつくものは所有可能なのです。所有可能というのはどういうことかというと、私が持っているものはあなたは持っていない、ということです。私のものをあなたのものにするには、あなたの代金と私のものを交換しなければなりません。交換した後は、今度はそれ--が何であれ--はあなたのもので、私の手元からはなくなります。

叡智には、こういった排他性はありません。私がE = mc2を知っても、アインシュタインがそれを知らなくなるということは起こりようがないのです。自分が持っている叡智を他人に与えても、あなたの叡智は少しも減らないのです。

こういったものに値段をつけてしまうと、お金にお金としての意味がなくなってしまいます。

だから叡智はゼロ円ということにしておかなければならないのです。
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まず、「群集の」はほっといて、叡智の値段を語られていますが、これは、話が飛躍しすぎだと思います。
弾さんのおっしゃっているものは、経済学で言うところの「外部経済」に当たります。例えば、隣の家の芝生がすばらしい、それを自分も楽しめる、だけど自分はそれに一円も払わないですむ。
こういう排他性のない財は、公共財と呼ばれていまして、市場の失敗の典型例です。
こうした財を市場経済に任せておいたら、ただ乗りがおこって、充分な供給がなされない。
こうした財の供給を充分に行うためには、市場に介入する必要があります(もしくは当事者どうしの交渉)。
それを、排他性がない=ゼロ円、というのは、ますます供給過少を引き起こしかねません。

なので、排他性をゼロ円の根拠にするのはまずいです。

ただ、弾さんのおっしゃるとおり、「所有権」が設定できるか、というのはキーポイントな気がします。
(排他性がなくても所有権のあるものは、例えば先述の芝生)
叡智は、価値を生み出すのに不可欠な要素です。しかし、残念ながら所有権が設定しにくい。どこからが誰のアイデアか分からないからです。
アインシュタインのE = mc2にしたって、アインシュタインよりも先人たちの貢献がゼロか、と言われるとそうじゃないと思います。
じゃあ、アインシュタインに無料でアイデアを出せ、と言えるか?
少なくとも、付加した部分については、何らかの配分があってしかるべきでは?


結局、その都度、貢献度に応じて何らかの妥協点を探らなければならない、というのが現在の落とし処なんでしょう。
(何%ぐらいはあげてもいいんじゃないの?みたいな)

そうしないと、アイデア自体の供給過少になってしまいます。例えば、「この会社がこういうことすれば、もっと価値が生める」「ここと手を組んでこういう事業すれば」というアイデアを持っていたとしても、なかなか売り込みに行けないでしょう。現状だって、売り込みに言った時点で、「いやーそれには気づいてましたよ」と言われたら、それまでです。まあここまでは、「証拠」で解決できるとしても、黙ってそれを実現されたらどうするんでしょうね?泣き寝入りしかないのか?(このあたり、現在の法ではどうなっているんでしょう?)
現状だってそうなのに、「いやアイデアそのものはゼロ円ですから」で納得できるんですかね?「そのアイデアはみんなのものです」と。

決して、「根源的には叡智の価格は0円」ではないと思います。価格にひき直す納得性の高い仕組みが作られていないだけです。
(個人的には、アイデアを過剰に保護するのもいかがと思っていますので、付言しておきます。)


これが、オープンソースになると余計話がややこしくなる。
根源的には、貢献度に応じて付加価値配分なんでしょうが、ただでさえ貢献度の落としどころがアイデアの場合難しいのに、「群集」なもんだから・・・。
今は「いい人」たちに甘えているのが現状であって、ここを解決しないと、結局、参加したモン負けか、貢献度の測定コストがでかくなりすぎて、やっぱオープンソース使えねー、って風潮になりそうで怖いです。



再び引用。
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具現化力は、「群れる」ほど強くなる
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これには激しく納得です。
叡智は群れないほど強くなるので、このバランスが難しいですね。
posted by nao at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済(学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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