2007年10月17日

田中先生のコメント

以前、僕が書いた「日銀の、いや中央銀行といふものによる金融政策といふもののミッションは何か、をまず議論するべき」について、田中秀臣先生のブログでコメントをいただいておりますので、ここに載せておきます。

(ちなみに、「サブプライム・ローン問題の本質は『不動産バブルの放置』と『証券化商品のリスク・リターンの不認識』にある」も関連記事なのでご参照を。)

tanakahidetomi 『中央銀行のミッションを中央銀行の目的関数の構成要素として理解するならば、物価安定と経済成長の達成この両方(米国)もしくは物価安定だけ(ECBなど)とするのが広汎に認められているところで、資産価格の安定、為替レート、国際的な取引などの水準を目的にすることは現代の中央銀行のミッションとしての合意にはなっていませんよね(その意味するところを考えたいと僕は思いますよ)。また理論的な分析でもこれらの資産価格の上昇率や水準を中央銀行の目的関数に入れることにはほぼ共通した反論・回避の提案が存在しています。資産価格の水準自体をミッションにすべきではない、ということです。
その一方で、今回のFRBやまたこのブログでも再三書いているように、資産価格の歪みが物価安定や経済成長などのミッション達成のリスク要因になれば、金融政策を実施することには現行の多くの中央銀行はためらうことはないでしょう。
したがって中央銀行の目的と手段は区別した議論が必要になるかと思います。そしてその議論の際には、各国中銀の実際とまた専門論文の参照での議論に徹するべきだと思います。

例として中央銀行のミッションの典型としてECBのものを引用
http://www.ecb.int/ecb/html/mission.en.html

さらに資産価格の上昇率などを考慮していないことをインタゲの弱点とお書きのように理解しますが、これもここ数年のインタゲ論の展開からいうと不思議な印象です。
というのは伸縮的なインタゲ(物価安定と経済成長の両方にウェイトをおくもの)と資産価格の水準ターゲットではなく、資産価格の歪みへの配慮が中銀のミッションを円滑にするという目的と手段の区別に配慮した上での論説も複数存在しているからです。

 資産価格安定をミッションとしてではなくミッションを達成するために資産価格の歪みを考慮すること、つまりは今回のFRBのような行動が採用されることが伸縮的インタゲの達成に好ましい=強みになる、という論文も存在します。
日本のブログではバーナンキ・ガトラーの論文がしばしば引用されますが、資産価格とインタゲの関係を扱った論文はまだ複数存在しています。

で、それらの主張と日本銀行の現行の政策ですが、ミッションの勝手な理解とその成果の貧しさはなにをかいわんです。』



長文のご返答、ありがとうございます。
「資産価格安定をミッションとしてではなくミッションを達成するために資産価格の歪みを考慮すること」、これは実に納得です。
確かに、ミッションを多岐にわたらせると、整合性の問題が起きますね(目的関数の数を増やしてしまうと、解決が複雑になる)。
僕の頭の中では、資産価格の歪みの放置→実体経済への影響(中銀のもうひとつのミッションたる経済成長への影響)、があったものですから、ああいう書き方になってしまいました。


PS.ただ、一つ疑問が湧いてきました。インフレターゲット論については、伸縮的な議論もあろうかと思いますが、例えば、CPI上昇率はマイナス、但し、資産価格の歪みが生じ高騰、将来的に実体経済に影響が出そうだと判断された場合は、インタゲ論からはどういう金融政策をとることになるのでしょう。ここの判断を「伸縮的に」すると、実に属人的というかアートの世界になって、結局、インタゲ論と非インタゲ論の違いがあまりなくなってしまうんじゃないかと思うのですが。
posted by nao at 14:50| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済(学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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