2007年10月05日

インド関連本2冊

門倉貴史「インド経済の実力」
インド経済の現状を、データ、図表で整理した本。



榊原英資・吉越哲雄「インド 巨大市場を読み解く」
最近のインドの飛躍を、より長い歴史の中でのインドの「復活」という視点で紹介。



以下、2冊についてのメモ書き。
○アンガス・マディソンによる試算によると(「世界経済の成長史1820-1992年」)、1820年時点の国別世界GDPシェアは、中国が28.7%、インドが16.0%。欧米各国は軒並み一ケタ台前半(英、仏がかろうじて5%を超えていた程度)。日本は3.1%。中国、インドが世界経済の中心だったのは、18-19世紀に突然起こったのではなく、四大文明の時代からほぼ連続。欧米の帝国主義的拡張で、清王朝とムガール帝国が滅亡、2地域が急速に没落していった19世紀中頃〜20世紀が、むしろ例外の時期。
→データとして出されると説得力あるなぁ、今の西欧偏重の世界史観が随分な作り話であることが。

○川勝平太によると、産業革命の遠因はインド木綿。
三角貿易が、インドと香料諸島(現在のインドネシア)と欧州の間で、インド木綿、コショウ・香辛料、銀の交換として行われていた。三角貿易の西方拠点は、中東→ヴェニス経由、からリスボン→アントワープ経由、17世紀には、アムステルダム、ロンドンへと移っていくことになるが、三角貿易の構造自体は長期安定。17世紀後半に、イギリスがオランダとの覇権争いに敗れ、香料諸島への足がかりを失いインドに撤退したことがきっかけで、この構造が崩れる。インド木綿が直接イギリス本国へ。それまで皮革・毛織物中心だったイギリス及び欧州の繊維産業は大打撃。イギリスはインド木綿の輸入禁止、国内での模倣製造を奨励(最初はみんなコピーなのだな)、18世紀後半に自国産キャラコを製造、相前後してハーグリーブスのジェニー紡績機、アークライトの水力紡績機が実用化され、産業革命が始動。

○インドの成長可能性の根拠は人口構成。中国に比べて、若年層人口が豊富。労働力の供給過剰具合も大きい。一方で、中国のようにトップダウンで一気に、というわけにはいかないかも。

○インドは、従来の、農業→製造業→サービス業、という成長も出るとは違い、農業→サービス業、と、製造業の発展を飛び越えている。ITによるBPOが顕著。医薬も有望。自動車製造の歴史は意外に古い。インド政府は、労働力の吸収源として製造業の発展を望んでいる。
→製造業の発展、必ずしも必要?

○インドで製造業や建設関連が出遅れているわけは、@インフラ整備が遅れていること A物を作る=低カーストの仕事だったこと。タージ=マハルの設計・建築もペルシャ人やアラブ人、欧州の職人によるもの。
→モータライゼーションには意外と時間がかかる?逆に、インフラ関連はまだまだウハウハってことか。

○美白市場が拡大する可能性大。紀元前1500年頃、アーリア人が中央アジア方面から侵入、インダス文明を滅ぼしてドラヴィダ人を支配。以後、北西部のアーリア人が支配階級。カーストの起源もこのときから。ヨーロッパ系と起源を同じくするコーカソイドのアーリア人のほうが色白であり、現在でも色白志向がある。求婚広告には、現在でも色白かどうかが記載されるほど。
→肌の色で身分を判断するモラルについてはアレとして、美肌商品を売っている化粧品会社にはでかい市場ですな。ブームというわけでもなさそうですし。

○インドの政治が民主政治であり、法治国家であるがゆえ、人治国家で一党独裁の中国に比べて政治リスクが低い、という通説は疑わしい。汚職・腐敗の度合いは、同じようなもの(Transparency Internationalによる腐敗・汚職指数ランキングによると、2005年調べでは中国が78位、インドが88位)。

○テマセクのインド傾斜。
→ま、抜け目ないテマセクのことですから、当たり前っちゃ当たり前。日本の投資主体にもこういう抜け目なさ必要ですねー。政府が主体になる必要はないですが。

○韓国企業の躍進。自動車でのヒュンダイ、家電でのLG、サムスン、と、インドでの韓国企業のプレゼンスはでかい。比べて、日本は全体としてのシェアは大きいものの、個々のブランドの存在感は薄い。


僕は、今から10年ちょっと前に、インドを3週間ほど一人で放浪したことがある。デリーから入り、アグラー、ヴァラナシ、カルカッタ(現コルカタ)とバックパック一つでふらふらして帰ってきた。それこそネタは尽きないおもしろい旅だったのだが、当時から随分変わったのだろうか。
成長ポテンシャルは間違いないだろうが、あの独特のカルチャーはそのまま残って欲しいと思う。欧米化され過ぎた日本の発展を考えると余計に。
Diversity is healthy.
タグ:インド 経済
posted by nao at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済(学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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