2007年09月25日

サブプライム・ローン問題の本質は「不動産バブルの放置」と「証券化商品のリスク・リターンの不認識」にある

佐藤秀さんに僕の先日のエントリを取り上げていただいています。

「日銀の、いや中央銀行といふものによる金融政策といふもののミッションは何か、をまず議論するべき」:日銀低金利政策が、円キャリーを通じて米国に・・と言いますが、米国の住宅問題は、FRBがもっと引き締めておくべきだったと思います。

という僕の意見に対して、

サブプライム最大被害は欧州系銀行のワケ
皮肉なことだが、FRBがもっと引き締めておいたら、サブプライムローンの焦げ付きはもっと拡大していたろうと思われるところに根深い問題がある。
(中略)
サブプライムローン焦げ付きの最大の被害者は欧州系の銀行だ。圧倒的なユーロ高、ポンド高を背景にほとんど無利子同然の日本から借金して債券化されたサブプライムローンに投資しまくった結果だろう。利払いの心配はないから思い切りリスク投資できる。
もし、FFが欧州並みにその後も利上げしていたらどうか。サブプライムローンの潜在不良債権はもっと大きくなっていたろう。不良債権が大きくなっても、日本と欧米の金利差は広がる一方だからますます旨みの出る円キャリー取引で化粧され、焦げ付きは表面化しにくい。多少損失が出ても安くなった円による負債は逆に利益になり損失を下支えしていたからだ。しかし、下支えできた分、焦げ付きが膨大になった。
(後略)


うーん、それはどうでしょう・・もちろん、FRBの利上げが遅きに失したら、当然、不良債権は拡大しますが。
FRBが不動産価格上昇を放置せずにいたら、そもそもCDO等を作る元となるサブプライム向けローン自体がこれほど増えなかったと思います(というか、増えないように金融政策をとるべき)。
サブプライム向けローンの担保が、上昇し続ける不動産価格だったわけで、その前提を退治していれば、劣化した証券化債券がこれほど出回ることもなかったはずです。
そうであれば、ユーロ高円安、ドル高円安だったとしても、(欧州銀行が多く購入した)劣化した米国発の証券化商品がそもそも多く出回ってないのですから、不良債権が今より大きいはずがありません。
というわけで、米国のサブプライムローン発の不良債権が、FRBが金利をもっと引き締めていたら余計増えた、という結論は、疑問が残ります。
もちろん、円キャリーによって他でバブルが発生した可能性は否定しませんが。

ただ、その円キャリーについても、金利差で為替を全部説明するのは疑問が残ります。
確かに、金利差が為替変動の圧力になることは間違いないです。
ただ、実際に利くかどうかは、時と場合によります。
FRBが利上げして、日米金利差が拡がったとしても、それ以上に米国経済が減速すれば、それはいずれドル安円高圧力になります。
FRBがもっと早い段階で利上げしていれば、米国の住宅バブル抑制、サブプライム・ローン抑制、米国の過剰消費も抑制、経常赤字も抑制、ってことで、調整を小幅に済ませることも出来たでしょう。
(もちろん、上げ過ぎとか遅すぎ、は他の不良債権の原因になりますが)
住宅価格上昇の継続を前提としたホームエクイティ・ローンで車を買う、ってのはやはり過剰消費以外のなにものでもなく、経常赤字拡大も相まって、現在のドル不安につながっているのは、否定できないと思います。

欧州と日本の金利差による円キャリーはあるでしょうから、米国住宅ローン証券化商品以外でのバブルが発生したかもしれませんが。

先般書きましたように、世界的過剰流動性の責任の一端が日銀にある、というのは、僕も全く同意です。
しかし、今回のサブプライム・ローン問題の本質は、日銀超低金利による円キャリーという裁定行為にあったというよりは、やはり、ありえない前提でローンを組み、しかもそれを証券化した債券を購入する際にリスク・リターンをきちんと把握しなかった(このあたりは、ぐっちーさんに詳しい)、ということにあるわけですので。
サブプライム問題の原因が円キャリーにある、というのは問題の本質を見誤ると思います。

裁定機会があるというのは、逆に健全かもしれませんよ。
なぜなら・・・


再び、佐藤秀さんの引用
私は主要中央銀行を束ねる国際中央銀行連合のようなものが必要な時代になってきたと思っている。とても「協調」程度では済まないのが現実だろう。


これは僕も考えました。
が、これは世界の景気サイクルの収斂度合いによる、と思いましたので、現在のところは「協調」に止めて置きました。

逆に、世界経済があまりに収斂しすぎると、閉鎖経済に近い形になり、海外経済というバッファーが小さくなって、世界的な景気の変動がでかくなるんじゃないか、という懸念を持っています(現実は、そっちに近づいている気がします)。
景気サイクルが違ったり、金利差があるほうが、まだましなのかもしれません。
posted by nao at 13:35| Comment(0) | TrackBack(2) | 経済(学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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田中先生のコメント
Excerpt: 以前、僕が書いた「日銀の、いや中央銀行といふものによる金融政策といふもののミッションは何か、をまず議論するべき」について、田中秀臣先生のブログでコメントをいただいておりますので、ここに載せておきます。..
Weblog: No Regret Life
Tracked: 2007-10-18 13:43

不動産の粘着性
Excerpt: 米国の雇用統計やISM指数など、米国不動産市況下落の実体経済への影響が明らかになりつつあります。 だから言ったでしょう、長引くって。 (米国の住宅市場、サブプライム・ローンにばかり注目が集まっています..
Weblog: No Regret Life
Tracked: 2008-04-01 14:17