2012年04月03日

先輩方の残す負債ばかりに目を向けないで、先輩方の築いた資産を利用しよう

日本の大きな問題の一つとして、財政(含む年金)の問題がある。

簡単に言えば、世代間の不公平の問題。
皆もどこかで見たことがあるかもしれないが、年代によって、払った額と受け取った額の差し引きに、大きな不公平が生じる。当然、若い年代になるほど割を食う。

その分、若い年代が稼ごうにも、日本は消費世代人口の減少とともに、内需の曲がり角を迎える。
少子化で労働力が足りなくなるから、外国人を受け入れようだの、高齢者を活かそうだの、女性の就労率を上げようだのといった話になる。
いや、これ自体に反対しているわけではないが、これらは、経済を供給側からしか見ていない議論。潜在成長力を上げよう、という議論。
ただ、今は、どちらかというと、需給ギャップがマイナスの時機。
つまり、供給を伸ばすどころか、需要不足で過剰供給になっているのが実態。
しかも、需要不足を解消しようにも、消費に回るお金は増えていない。労働分配率が低下しているから。
企業が稼ぐ付加価値のうち、賃金に回る割合が増えないのだ。
上昇する資源価格により付加価値は低下し、稼いだ付加価値も、労働者ではなく株主側に回る割合が大きくなった、というのがここ10年。

だから、いくら規制しようが、企業は労働賃金を抑え、それを変動費化しようとするのが合理的になる。
当然、年代の高い人は既得権者として、企業に居座り、その分、若い世代が、労働力の変動費化のしわ寄せをもろに受けている。

つまり、若い世代は、ストック面で、財政や年金という先輩世代の負債を引き受けると同時に、フロー面でも、供給過剰経済とグローバルな経済の大きな潮流のしわ寄せを受けて、稼ぎも減っている。

政治を変えようにも、世代間の人口は、若い世代ほど少ない。そのうえ、投票率も、これまた若い世代ほど低い。
ただ、若い世代なんて、「通常運転」なら、知識もまだ少ないし、政治に関心が薄いのも当然かもしれない。
つまり、これを逆転させるほどの「せっぱつまった感」はまだないということだし、そういう意味ではまだ通常運転なのだろう。


で、誰が悪いんだっけ?
誰かのせいにして、何か変わるんだっけ?

こうした世代間不公平の話には、圧倒的に抜けている観点がある。
先輩たちから受け取る負債の反対側には、同じように先輩たちから受け取る資産があるはずなのだ。

これをもっと利用しない手はない。

で、こうした資産は目に見える有形資産だけじゃない。


アジアの新興国に仕事で行くとよくわかる。
「日本人」の信頼度がいかに高いか。
一部の、日本のことをあまり好きではない国は別として、その他の国や地域での、日本人への信頼感は、当の日本人である僕が驚くほどだ。
これは、単に「親日的」というレベルではない。
よく言われてきた日本製品のブランド力、というレベルでもない。
そういったレベルを超えて、日本人に対する「信頼感」「信用度」が、驚くほど高いことを感じるのだ。
僕が各国のトップビジネスパーソンたちにそれ程苦労せずに会えるのは、僕個人への信頼だけでは説明がつかない。僕は今となっては大企業の肩書を背負っているわけではない。もちろん、何をしている人間で何をしてきたか、これから何をしようとしているか、というのは伝えるものの、それまで僕のことを詳しく知らなかったことを考えると、おそらく「日本人だから」ということが、有利に働いていることは間違いない。

ビジネスをする上で、信頼がないということは、すなわちコストがかかることを意味する。
それを、日本人はかなりの部分でクリアしているのだ。
おそらくそれは、日本人の国民性とともに、今はまだ保持している経済力も、そのブランドのバックにあるはず。
(少なくとも、アジア新興国の人たちは、まだそう思ってくれている。)

たとえば、ある国での日本人経営者。
彼は、その分野の専門家でもなんでもなかった。おそらく、日本国内にいたら、この分野でズブの素人がこうした企業の経営者にいきなりなる、なんてことは起こり得ない。
でも、その国では、日本人、ということでの信頼感が生きる。
加えて、彼を経営者にすることで、日本の資本が入ってくることを期待されている。

別の例。インドネシアでは、日本だけ自動車の関税が低い。なぜこんなことがまかり通っているかというと、、、
太平洋戦争で日本が敗れた後、インドネシアには宗主国であるオランダが再び己が領土にしようと乗り込んできた。そこから4年にわたって独立戦争が繰り広げられるのだが、敗戦後の日本兵がインドネシアに残り、インドネシア兵とともに独立戦争を戦った。インドネシア人は、これに大変な感謝を示してくれる(僕が戦ったわけではないのに)。
もちろん、その後の関係性の積み重ねは当然あるだろうが、インドネシア人に聞くと、必ずこのエピソードに行きつく。


誰がこうした信頼を獲得したのだ?

目に見える形での社会資本だけでなく、こういった無形の資産も、実は先輩世代が築きあげてきたものだ。
僕は、先輩方に媚を売りたいとか、そんな気は全くない。
世代間不平等は、とても大きな問題だと思っている。
ただ、評価はフェアであるべきだと思う。
若い世代は、先輩方からの負の遺産にばかり目を向けるのではなく、正の資産をもっと利用する前向きな姿勢があってもいい。

残念なことに、こうした資産は、ほおっておくと、その資産価値がどんどん低下する。

海外に行くと、必ず聞かれる。
「中国人や韓国人は来ている。なぜ日本人は来ないのだ?」
このままでは、10年、いや5年もすると、日本の存在感は薄れ、こうした正の資産も劣化しかねない。

もちろん、日本国内でも伸びる分野はあるし、開拓できる市場はある。
海外市場を取りに行かなければ生きていけない、と言うつもりはない。
ただ、平均的にはやはり、日本の内需の成長率は、こうした海外の新興市場の伸びには後れを取るだろう。
こうした海外の成長市場を取りに行く姿勢をもった人は、「視界の6割」を有効活用できるだろう。

この時、僕らが想像している以上に、先輩方の残す資産は、力を発揮してくれるはずだ。


(あ、現地の経済や市場、制度、文化、それから為替の行方については、羅針盤が必要ですよ。必要な時は、当事務所に一度ご相談くださいね。笑)

posted by nao at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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