2006年10月20日

モンテカルロDCF、リアル・オプション

(入院中ヒマなときに、ファイナンスの新分野の復習として、リアル・オプションの本を読んだので、その備忘録。金融理論に詳しい方、あるいは実務に詳しい方は、ご示唆をいただけるとありがたいです。金融理論に興味のない方はスルーしてください。)




大きなテーマとしては、
・モンテカルロDCF
・(ディシジョン・ツリー分析)
・(バイノミナル・モデル)
・リアル・オプション
これらをいかに実務での事業価値算定や投資の意思決定に利用するか、ということがケースを用いて説明されてあった。
この本自体は、説明が結構不十分で決して入門者が読みやすい本ではありませんので、ご注意を。
実務への理論ツールの利用を整理するのには使えます。


というわけで、以下、モンテカルロDCFとリアル・オプションについて。

事業価値算定の基本は、DCFモデルである。
しかし、DCFモデルではいくつかの限界があり、それを解決するためにDCFの発展系として、上記のような分析モデルが登場した。

DCFモデルでは、数多くのシナリオ分析をするには限界がある。
そこで、企業の業績を左右する重要ドライバ(為替や原材料価格など企業によって違う)に確率分布を仮定して、モンテカルロ・シミュレーションをぶん回し、結果としての事業価値も確率分布として考えよう、というのがモンテカルロDCF。

4年ほど前、構造計画研究所のリスク分析シミュレーション・ソフトである「クリスタル・ボール」のセミナーに出席した僕は、会社に、アナリストの業績予想を確率分布で作って、企業価値算定することを提案したことがある。
(あえなく却下。まあ理解して利用することが出来る人が多いとは思えなかったので、それ以上はごり押ししなかったけど。たぶん提案した上司も理解してなかったと思う。)

それが、今やコンサルの分野では当然のように使われるようになってきたんのかな。
俺も使いたいのだが、ソフトがバカ高い。
(誰か、モデルを作ってくれる人いませんかー?)

利点は、リスクをキャッシュ側に集約したこと。おかげで割引率をリスク見合いでどれぐらいにしようかーと悩まなくて済む。
でも、そもそもの確率分布をどう仮定するか、ということでざっくりした前提が必要になるので、行って来いの気もする。
シナリオをたくさん試したい場合には、有用です。



さて、DCFモデルの別の限界として、オプション価値を事業価値に盛り込むことができない、という点もある。
例えば、2つの事業があり、どちらも予想される将来キャッシュフローが同一、リスクも同一とする。
そうすると、DCFで算定する事業価値はどちらも同じになる。
しかし、一方は途中で撤退が出来るのに対し、一方は途中撤退ができないものだとしたら、本来は前者のほうが、そのオプション価値だけ事業価値は高くなるはずである。
そこで金融オプションの価格算定モデルであるブラック・ショールズ式を応用して、このオプション価値を事業価値に盛り込もう、というのがリアル・オプション。

結果、DCFでは過小評価されて投資されない事業が、リアル・オプションで事業価値評価すると、投資されるようになったりする。
(ところで、ひとつ疑問なのだが、撤退できる事業と撤退できない事業では、そもそもリスク認識が違うので、割り引く資本コストが変わってくる、つまりDCFで算定しても事業価値は違うのではないか?)

リアル・オプション理論に最初に触れたのは、5,6年前だったか。
何かの雑誌で紹介されていたのを読んだのが最初。
なるほど、確かに理論としてはすごく全うで金融理論の面白い応用の仕方だな、と思ったが、これをリアルの事業に実務上適用するのは結構大変ではないか、とも思った。
事業のボラティリティとかどうやって計算するの?とかね。

そうこうしているうちに、リアルオプションの本なんかが紹介され出し、そして例によって、構造計画研究所がリアル・オプションのソフトを販売し始めました。
このセミナーも聞きに行ったことがあり、それが3,4年前だったかな。
(この会社、本業は建設関連のCAD/CAMのソフトを作って売ってんだが、ボストン・コンサルティング出身の服部さんって人が社長になって、こうした最先端の経営理論関連のソフト・ビジネスを目ざとく手がけるようになった。まあ、さすがのセンスというか。)

それが今や、これまたコンサルの分野では、普通に実務に活かされているのかな。
かなり強引な仮定を各所に置いているようだが。
それでも、おおよその事業価値の落としどころを定量化できるという意義は、やはり大きい。
隔世の感があるなー。
投資銀行系は普通に使ってんだろうな。
ベンチャー・キャピタルとかはどうなんでしょうか。
(その辺の事情を教えてくれる人、いませんか?)

ちなみに、アナリストでリアル・オプションを使って企業価値を算定している人なんているのかね?
少なくとも、僕が以前いた会社では誰もそんなことしてなかった。
リアル・オプションを使わないと、過小評価しがちなセクターの担当者でもね。
この記事へのコメント
こんにちは。
いつも楽しく拝見しています。
Monte Carlo シミュレーションは使っていますよ。

さいころを振って、メトロポリス判定にかけるくらいなら作れます。

ところで質問です。
今、naoさんが考えているモデルでは、
何が確率分布の横軸(縦軸は確率)になるのでしょうか?

お時間があるときに教えてください。
Posted by snow at 2006年10月20日 16:49
こんにちは。
なんだかんだで初めてコメントします。
実は、「クリスタルボール」もってたんですよ、僕。
言ってくれればー。。。
牟田さんがあれ使ってレポート書いてたら面白かったでしょうね。
部長による発行差し止め間違いなし(笑)。
うーん、マジで残念。
背中合わせで仕事してたのに、皮肉なもんです。
Posted by takeda at 2006年10月20日 19:47
snow-san
コメント遅くなってスミマセン。
えーと、何が横軸になるかというと、様々です。
まず、僕がここで想定しているモデルは、企業の将来業績の予想モデルです。
最終的には、企業の利益(あるいはキャッシュ)の予想をしたいのですが、そのために最も重要なのは、どの企業においても、「売上」の予想です。
で、その売上を決定する主要パラメータが企業によって違うわけです。
その主要パラメータに確率分布を仮定してみよう、というわけですね。

利益を予想するのに、当然、コストの予想もしなければなりませんが、ここにも主要パラメータがあって、それが確率モデルを仮定できるようならば、そうしたい、と。

で、これがsnow-sanの質問への直接的な答えになるのかもしれませんが、そのパラメータによって実数であったり変化率であったりします。
(例えば、為替レートなどは、変化率であれば、ほぼ正規分布で近似、とか。)

そういうお答えでよろしかったでしょうか?
PS.ところで、snow-san、もしよろしければ、メアドを教えてもらえますか?
可能ならば、右列にある僕のメアドに送ってください。


takeda氏
初コメント、ありがとう。
いやー、ほんとあれ使いたかったんだよねー。
一悶着あったかもしれないけど。
でも、同じ業績予想でもリスク認識が違うと企業価値が違う、ってことを気づかせる、いい機会にはなったと思うんだけどね。
あるいは、単純に、業績予想が分布で出るので、会社予想を上回る確率がかなり高いとか、まあ妥当なラインとか、そういう情報源として、投資家さんに伝えることも出来たと思うわけですよ。
そういう面での付加価値の高い情報というのを目指す姿勢があってもよかったのではないかなと。あまりに早耳情報に偏り過ぎると、そういう投資家しか客にならなくなるんで。
Posted by nao at 2006年10月30日 00:45
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