2008年08月25日

大薗恵美、清水紀彦、竹内弘高「トヨタの知識創造経営 矛盾と衝突の経営モデル」

お仕事がらみで読んだ本。

僕は、トヨタの強さの源泉は、人の生産性に行き着くと思ってきた。
トヨタは、社員に本来の業務以外のミッションを与えることで、生産性の上昇を仕組み化している。
例えば、工場のラインで働く人は、本来、組み立て作業がミッションで、普通の会社ではそれだけをやっている。しかし、トヨタでは組み立てという本来ミッション以外にも、生産システムの効率化を毎日考える。末端一人一人までが提案者になり、ベストプラクティスを共有して横展開する。
こうしたことをすべての業務でやっているのだ。

本著は、この考え方を裏付けてくれるとともに、それをはるかに超えるトヨタの強みを提供してくれた。例えば、

生産性上昇の仕組み化が何重にも施されている、
仕組み化によって横展開とともに応用も可能にする、
フォーマット統一・言語統一で情報共有を効率化する、
暗黙知をもなるべく明文化することによって共有にチャレンジする、
仲良くケンカする文化でトヨタ内「民衆の叡智」結集を企む、
小さく実験して、大きく勝負する、
現場・現地を重視する
哲学、ミッション、理念を大事にしつつ、それに固執して身動きが取れないということを、哲学自体が否定している、
etc

本著は「知識創造企業」のケーススタディ版。トヨタの一見矛盾に見える部分が、実は競争力の源泉であるとして、整理している。このあたりのパズルの解答は、ぜひ本著をお読みいただきたい。
一端を紹介すると、3つの拡張力(不可能な目標、実験主義、現地顧客対応)と3つの結合力(創業者哲学、情報共有、長期安定雇用)という基軸で、トヨタの強さを説いている。
また「障子を開けよ、外は広い」「NotYetの思想」「だれもが勝利者となるべき」「なぜを5回」など、文化・哲学が表れたショートタームを紹介しているのも、腹の底に落ちやすい(こういう言葉の方が暗黙知になりやすいってことか)。

こうした経営上の仕組みや文化に加え、今のトヨタの地位を築いたのは的確な経営判断があったことは触れておくべきだろう。
それは、自動車産業を「成長産業」として位置づけ、投資や研究開発と言った先手に余念がなかったこと。そう考えれば、配当性向が高くないことも説明がつく。

そして、本著はトヨタのリスクについても、きちんと言及されている。
個人的に注意しておくべきと思うことは、低価格車への態度、自動車のモジュール化、大企業病。
特に、低価格車への「まあ、やらせておけ」的な態度は、かつて米国市場に低価格の日本車が進出していったときに、米国メーカーがとった態度と重なる。
ただ、トヨタなら、そのうち「実験」を始めて、なんとか結果を出すのかもしれない。

内容盛りだくさんで、噛めば噛むほど味が出る本。
トヨタを投資対象として考えてらっしゃる方、トヨタの強みを自社にとりいれ自社の文化に昇華させいと考えてらっしゃる方はぜひ。

ちなみに、先日、著者のお一人の大薗先生にインタビューする機会を頂きました。えーっと、きれいな方でした(笑)。だけど豪奢なところがまるでなく、率直で聡明な気持ちのいい方でした。
非常に有意義なインタビューを、ありがとうございました。
それからちょっと竹内先生に御挨拶させていただきましたが、オシャレなスーツで、数年前に講演を聴かせていただいたときと変わらず、若々しい楽しい方でした。

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目次
1章 矛盾だらけの会社
2章 6つの強み
3章 不可能なゴール
4章 実験精神
5章 徹底したローカル化
6章 創業者精神
7章 社内外コミュニケーション
8章 人材管理
9章 リソース管理
10章 迫る危機
11章 矛盾と対立
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posted by nao at 16:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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